通信制高校を選ぶ際に知っておきたいことの1つに、公立と私立の違いがあります。
全日制高校を選ぶ場合、住んでいる地域の学区には複数の公立高校があるので、私立でなく先ずは公立高校から選ぼうとするのがセオリーですよね。
でも、通信制高校の場合は、その中から選ぼうとすると、

公立の通信制高校って、ウチの近所にあったかしら・・・?
と考えてしまう人が多いでしょう。
そこで今回は、
・公立の通信制高校が私立とどう違うのか
・公立と私立のどちらを選ぶべきか
以上についてお話しします。
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通信制高校で公立と私立の違いは?
通信制高校で公立と私立を比べると、学費はもちろん大きな差があるのですが、それ以外にも様々な違いがあります。
では、項目別に確認していきましょう。
通信制高校の数
2019年5月1日時点における通信制高校の数は以下の通りです。
公立・・・78校
私立・・・175校
参考ページ:文部科学省:学校基本調査-令和元年度調査結果の概要
この数字だけだと、「公立の方が私立よりも少ないけど、2分の1なら思ったほど少なくない」と思うかもしれません。
でも、私立の場合は広域通信制高校がかなり多く、その場合には入学可能な範囲が全国になるため、意外とあちこちにキャンパスが設置されていることが多いです。その結果、圧倒的に私立の通信制高校の方が多いし選択肢が多いのですよね。
受験可能な高校の地域
公立・・・居住地または勤務先所在地の都道府県で選ぶ必要があります。
私立・・・居住している都道府県以外の高校を選択することも可能です。ただ、学校によっては地域を制限するところもあります。
通学に関して
通学頻度(日数)については公立、私立ともに様々な形態がありますが、選択肢の多さや柔軟性の高さは私立の方が勝っています。
例えば、私立の場合、スクーリング日程(頻度や日数)について複数の選択肢から選べる学校が多く、中には「年1回で4日間だけ」というところもあります。また、スクーリングやテストを受けられないと単位を落とす可能性があるのですが、私立の場合はやむを得ない事情等を考慮して救済措置を検討してくれる可能性が高いです。
公立の場合は週1回や月に2回などの頻度(1年で20~40回程度)でスクーリングを行う学校が多いです。でも、都道府県に1校しか公立高校がない場合は、家の近くに学校がないと通学するのが大変だと感じるかもしれません。
ただ、北海道をはじめ、都道府県に1校しか通信制高校が設置されていない場合、複数の協力校の中からスクーリング会場を選択できるケースが多いです。
学費
学費については以下のような違いがあります。
受験料
公立・・・1,000円程度
私立・・・10,000~20,000円程度
入学金
公立・・・500円程度
私立・・・10,000円~120,000円程度
授業料
公立・・・1単位につき、200~1,000円程度
私立・・・1単位につき、7,000~20,000円程度
諸経費
諸経費として、教科書や教材費等がかかります。また、私立の場合、通学頻度が多いコース等においては制服や体操着、バッグ等を指定する学校もあります。
その他、目に見えない費用として、学校までの交通費やレポートを郵送で提出する場合にはその郵便料金もかかってきます。(ただ、通信制高校のレポートの郵送料は第四種郵便料金に該当するため、100gまで15円となっており、さほど負担感はないでしょう。)
卒業までに必要な費用
公立・・・約10~15万円
私立・・・約70万~400万円
ただし、授業料については世帯収入に応じて就学支援金が支給される可能性があり、その場合は少し安くなります。
ですが、公立と私立ではかなり学費に差があるのが分かりますよね。
卒業までの年数
公立・・・最低3年または4年(学校によって異なる)
私立・・・最低3年
コース
公立・・・多くの高校が普通科のみとなっています。一部の高校では別の専門性のあるコースもありますが、その場合には技能連携校での受講となるため、そちらの学校にもダブルで入学する必要があります。
私立・・・学校によって異なりますが、様々なコースがあり、様々な専門性の高い授業を受けられます。
授業内容
公立・・・中学生の学習範囲は既に学んだもの、という前提で高校生の範囲を学んでいきます(全日制普通高校と同等レベルの内容)。もちろん、入学時には中学生の復習から入る授業が多いので完璧にマスターしていなくても大丈夫ですが、中学生の範囲を一通り学んでおく必要はあります。
私立・・・不登校等の経験者でも入学可能ということで、中学生の学習範囲が不安な生徒でも無理なく学習していけるようなプログラムもあります(学校によって対応レベルが異なります)。
レポート
公立・・・学校によって異なりますが、教科書の一部を要約したり、それに対する自分の意見を書く等、時間のかかる課題が多いです。レポートの回数は学校によって異なりますが、私立に比べてかなり多く、きちんと仕上げないと何度も再提出することになります。
レポートの枚数も、「単位数×3枚」「1週間に2~3枚」を目安とする学校が多いです。ですので、1年間で25単位取得する場合は75枚程度を目安としておけば良いでしょう。(ただし、学校によって異なります。)
私立・・・学力遅れで中学生範囲から学習している場合であっても、レポートは高校生の範囲からの出題になります。ですが、教科書等の穴埋め問題など、与えられた教材を確認すれば出来る課題が多いです。レポートの回数は公立よりも少ない学校が多いです。
サポート体制
公立・・・教員が少ないこともあり、分からない箇所を相談するチャンスが乏しいです。ただし、学校によって体制がかなり異なります。スクーリング以外の日にレポート作成等の学習支援をする時間を設けている学校もありますし、時間割として存在しない場合でも個別対応してくれる学校や、電話で質問可能な学校等様々あります。これらのことは、学校によってはホームページ上でも確認できますし、詳しく書かれていない場合については直接その学校に確認した方が良いでしょう。
私立・・・学校によってサポート体制が異なりますが、丁寧な学校では1人1人に担任をつけたり、個別対応を行う等、履修漏れの無いよう注意を払ってくれる学校が多いです。(私立の場合も、サポート体制は学校によって様々なので、実際にその学校に確認しましょう。)
通信制高校で公立を選ぶ場合に陥る恐ろしい事態とは?
公立は私立に比べて圧倒的に学費が安いので、親としては、出来れば公立の通信制高校に行ってほしいと願うものです。
でも、公立を選んだ場合、最大の欠点として「卒業率が低い」ということがあります。折角良かれと思って通信制高校を選んだのに卒業できなかったら悲しいですよね。ですから、じっくり考えて決める必要があります。
では何故、公立高校の場合は卒業率が低いのでしょうか。
それは、既にお話しした公立と私立との違いからも分かるのですが、特色の違いが原因とも言えるでしょう。
卒業率が低い4つの原因とは?
(1)学校数が少ない→家から遠い場合、スクーリングに通うのが大変になる。
通信制高校の場合は毎週1回など定期的に通うケースが多いけれど、都道府県に1ヶ所しか無い地域では、遠方から通うことになる可能性があります。ただ、協力校があればそこで受けることができます。
(2)教員数が少ない→勉強の相談がしづらい。
家で勉強していて分からない部分について、スクーリング等で聞くチャンスがあれば意欲も維持できるけれど、人数が多すぎるため、聞けずに終わる可能性があります。ただ、学校によってはスクーリング以外の日に学校の自習室で勉強することもできるし、先生が学習支援の時間を設けて、集団または個別による対応を行ってくれます。ですので、自分から積極的に聞きに行く姿勢が重要でしょう。
ちなみに、公立通信制高校の教員数は、規模が小さければ教員1名で生徒46.2名までを担当するという決まりがあります。
生徒数が増えて1,201名以上であれば教員1名で生徒100名となります。
(全日制や定時制については、1学級40名以下となっています。)
(3)学習内容が全日制と同等→やるべき課題と自分の状況が合わない可能性がある。
入学時の暗黙の条件として、「中学生の範囲は一通り学習していること」があるので、長期間不登校をして未学習の範囲がある場合には課題についていくのが厳しいかもしれません。一方、既に将来の目標がある場合には、コース選択が少ないため、自分が学びたい分野とのギャップで物足りなさを味わう可能性があります。
(4)サポートが少ない→単位取得漏れが生じる可能性がある。
勉強以外だけでなく、履修登録からスクーリング受講、テストまでの必須事項について、漏れの無いようにやっていけるか、というのが通信制高校での重要ポイントなのですが、公立の場合はそこまでのサポートはしていません。(ただ、分からない場合には自分から聞きに行けば教えてもらえます。)
一方、私立の多くの学校では、受講忘れの無いよう学校側で管理するシステムが出来ているため、よほどのことが無い限り、単位取得できないという事態にはなりません。
卒業に対する考え方の違いとは?
全日制を念頭に高校を考えていた場合、卒業までの年数は3年間というのが基本ですよね。ですが、公立高校の場合は、卒業に4年かかる可能性があることを注意しなければなりません。
というのも、公立通信制ではレポートを作成するのが結構大変なこともあり、「着実に学んで4年で卒業しましょう」というスタンスの学校が意外と多いのです。これは、全日制と同じ課程を通信制で行う都合上、きちんと理解するためにはそれだけの年数が必要になるだろう、という趣旨なのですよね。(定時制が4年間というのも同じ考え方です。)
ですから、最初から卒業までの期間が4年間と定められている学校も一部にはあります。ただ、やはり全日制と同様に3年間で卒業したい人も多いことから、「3年または4年間」と定めている学校が多いです。ただし、その場合には「頑張れば3年でも卒業できますよ」という考え方なので、「スクーリングを週1回でなくもう1日増やす必要がある」という学校が多いです。
一方私立の場合は「全日制と同じように3年で卒業できる」ことを重視している学校が多いし、公立に比べてレポートが難しくない学校が多いので通常は3年で卒業できます。
公立と私立の選択で迷った時の考え方とは?
以上のことから、公立通信制高校を選ぶ場合、「本人が自主的に勉強できるか」「自分から積極的に質問しに行けるか」が鍵になります。
もし、1つでも難しいのであれば、サポートの手厚い私立に行く方が安心ですよ。
また、私立の場合には、学校によっては高校生活だけでなく、「将来どうなりたいのか」を考えることができるコースやプログラム等が用意されているので、単に高校卒業資格を得るだけの学びでなく、今後の人生についての相談もできます。ぶっちゃけ話ですが、私立の場合はお金をかける分だけ丁寧な対応をしてくれる、ということになります。
さいごに
公立高校は学費が安い反面、先生が少ないので私立よりもサポートが少なく卒業率が低いというデメリットはありますが、学校によってサポートは様々です。
というのも、公立は自学自習のスタンスとはいえ、やはり入学した生徒には頑張って学び、きちんと卒業して欲しいと願っています。ですから、学校によってはスクーリング日だけでなく別の日に個別対応や電話で質問を受け付けたりしてくれるところもあります。
公立の場合、全日制の生徒と同じように学んで高校課程を身に付けて欲しいというのが前提なので、私立に比べてレポート等のハードルが高いけれど、学校の成り立ちなどを考えると仕方ないことなのです。
ですから、そういう意図を理解して、「公立で頑張って授業についていこう」「分からなかったら先生に質問しに行こう」という気持ちがあれば、公立でも上手にサポートを受けて充実した高校生活をおくることが可能でしょう。
★近くに公立通信制高校があるか知りたい場合は、以下の記事でご確認ください。
→公立通信制高校 都道府県別一覧
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